日本のように情緒的な社会においては、信頼を裏切られたという感情は、相手にたいする不信感、場合によっては憎悪を一気に高める。日本の労使関係は、平時においては相手の誠意を信じる情緒的信頼関係の上に成り立っている。したがって、労使の約束を労働協約やその他の文書にして明文化することが少ない。しかし、ひとたび信頼関係が裏切られたと感じるや、労働者側は、日常的な秩序から一気に抜け出て、暴力をもふくむ過激な行動にでる。
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日本の労使関係は、過度に労使信頼的であるか、憎悪にみちた対立という二つの極端な状況になりがちである。従業員が終身雇用を信じている場合、会社は重大な決意をしないかぎり、正規従業員の人員整理をはじめない。幻想としての終身雇用は、それが多くの従業員によって信じられたために、社会的な力となったのである。大企業が人員削減を最後の手段と考える第四の、そしてもっとも重要な理由は。過去におこなわれた大量解雇の経験である。高度成長がはじまる一九五五年以前、東芝、日立製作所、三菱電機、日産自動車、トヨタ自動車などいまでは世界企業となっている会社で大量解雇がおこなわれた。敗戦による経済崩壊からの立ち直りがかならずしも円滑にいかず、大量解雇が必至となったからであった。大量解雇は企業内組合から激しい抵抗をうけ、大争議へと発展していった。