当時から、様々な憶測や噂はあった。たとえば、現ビームス社長と生え抜き幹部たちの経営方針に対する温度差が原因だったという説。会長とのボタンの掛け違いによる確執が原因という噂。あるいは、上場、非上場に対する考え方の違いが原因だったという説。冒頭で触れた、スズカへの参加が、幹部たちの不満を決定的にしたという説も何人からか聞いた。しかし、これらは、いずれも現ビームス社長以外の当事者たちに正式な取材を申し込んで聞いた話ではなく、噂、風説の域を出ない根拠の薄い憶測、推測である。結局、89年事件の真相は闇の中だ。しかし、いまさら、それを明らかにしたところで、あまり意味があるとは思えない。ビジネスは、弱肉強食。学生の仲良しサークルでもない。ファミリー企業である限り、創業者の家族が後継者になるのも、トップがヴィジョンを示し、判断し、決定権を持つのも、なんら不思議なことではない。また、それにとって代わろうという野心や夢を持つのも、自分のキャリアを最大限に活かす場を求めて、独立して新しいビジネスをはじめるのも、なんら責められる筋ではない。その是非を問うのは、そもそもナンセンスだろう。