口元に手をそえる習慣

2010-12-02

「東北へのグルメツアーのときだったんですが、そのお客さんに、おねえさんもこっちへ来て一緒に飲もうといわれたので、お酌だけしたんです。そのとき、どうぞと笑顔で勧めたら、“そんな馬みたいな歯茎を見せられたら、酒がまずくなる”って……」。Kさんはここまで話すと、顔をおおって泣き出してしまった。酒の席とはいえ、まったく非常識極まりない人間がいたものだ。だが、たしかにKさんは笑うと歯茎がむき出しになる。英語では、これを「ガミースマイル」という。「ガミー」を日本語に訳すと、「ネバネバする、粘着性の、歯の抜けた」といった意味だ。ただ、日本語にはガミースマイルに相当する言葉はない。日本人は昔から笑うときに口元に手をそえる習慣がある。だから歯茎がむき出しになっても目立たなかった。そんなこともあって日本人の美意識としてなじみは薄いが、欧米人はこの笑顔を敬遠する傾向にある。ハンカチで涙を拭いながらボクの説明を聞いていたKさんは、落ち着きを取り戻すとこう訴えた。